2016年11月27日日曜日

比較流域研究

 全国のいろいろな場所で流域研究、地域研究、がなされてきて、その蓄積数は相当数にのもぼるものと考えられる。しかし、相互に比較した事例はほとんどないのではないだろうか。流域には個性があって、流域ごとの事例研究に尽きるという考え方が暗に支配的である。しかし、このままだと、永遠に事例研究を続けていき、いつまでたっても普遍化されることがないのではないだろうかという危惧を抱く。普遍的な解なんか存在しないというのもまた聞こえてきそうな反論であり、もっともだと思う面もある反面、釈然としないもやもやも残る。このもやもやが何かということを考えると、いくつかの理由が考えられる。ひとつは、学問的には、普遍性を求めてこそ学問である、という点である。またひとつは、何らかの形で普遍化をしない限り、不測の事態や、将来の起こりうる事態に対して対応できないのではないか、という点である。さらには、対象を理解するときの理解の形式として、そもそも開放系である流域や地域をまるで閉鎖系のように取り扱うことにも問題があるように感じる。

2016年11月5日土曜日

自律的にコード変更するプログラム

私が持っているコンピュータのプログラミング言語の知識は、Basic, Fortran, C, HTML, 等であり、計算用にプログラミングを使用してきた程度である。だから、プログラミングの最前線を知っているわけではない。しかし、プログラミングとその実行の基本原理は本質的には変化していない、ということが事実ならば、外界からのインプット、たとえばインターフェィスを介した利用者からのフィードバックに対して、自ら自身を動かしているプログラム自体を書き換えるプログラム、というのは存在しないのではないだろうか。もし存在しているとすれば、私はそれを道具として使ってみたい。というのも、流域で発生する河川の流出や水質のシミュレーション結果を、一般の人に見てもらって、間違っているところ、おかしいところを指摘してもらい、シミュレーションのコード自体を修正していくという過程がリアルタイムで実行できるようになるためには、そういったプログラムが是非とも必要になるからである。もちろん、プログラムの製作者である研究者が、コードを書き換えて、再度シミュレーションを実行する、ということが最初のプロセスであろうが、それがより進化した形になっていくためには、自律的自己編集プログラムが必要なのである。そして、それは、本当のAIかもしれない。しかし、そういったことが実現するにはまだ少し時間がかかりそうだから、とりあえず、その前の段階として、研究者自身が要因にプログラムを変更していくことができるような、インターフェイスをトイモデルでもなんでもいいから、手持ちのプログラムスキルを少し磨きながら、作っていくことをやっていこう!

デザイン(3)

design
通常の意味:指定する、指示する、企画する、意図する。
語源:ラテン語、脱(de)‐印(sign)化。この語源は意味深長である。印を脱していくこと。そこにある何らかの形、見え方から脱する、解放される、ということか。

2016年10月18日火曜日

CRUデータセットのフォーマット

イギリスのCRU(Climatic Research Unit)のデータセットを使用したアムール川流域の解析をしているのだが、データの並び順に関する書式の説明がなくて、閉口した。地球の南緯90度、東経0度を始点として、経度方向に720列、緯度方向に360行を一時間ステップとするデータ並びだとばかり思っていたら、南緯90度、西経0度を起点としていることがわかった。アムール流域でのみ抜き出して解析しようとして抜出のプログラムを作成して、Gradsで確かめたらうまく抜き出されず、プログラムに間違いがあるのかもしれないという疑いのほうが強くて、データの並び順にはほとんど気がいかずに、一晩悩んでしまった。

2016年10月16日日曜日

過去の卒業論文研究テーマ

2012年度

1.濃尾平野における海面上昇に伴う塩水侵入の評価
2.日本の河川における溶存鉄生成要因の解析

2013年度

なし

2014年度

1.小水力発電適地検出アプリのためのデータベース構築と解析
2.水・物質循環モデルによる流域の放射性Cs負荷量の推定
3.庄内川・長良川水系のCODとTOCの比較考察

2015年度

1.熱水土壌消毒に向けた数値シミュレーションによる温度環境の評価
2.木津用水地区の都市化に伴う農業用水需要の変化
3.圧電素子による樹冠遮断構造の評価

2016年度

1.揖斐川流域における降雨時負荷量の推定

圏論(Category Theory)

圏論は、メタ数学のような分野ととらえられるらしい。分類や思考の在り方を記述することにまで迫れるような気配がするので、少しづつ勉強してみようと思いたち、いくつか本を揃えたが、なかなかハードルが高かった。最近Haskellというプログラミング言語があることを知り、このHaskellは、圏論をもとに作成されているということらしい。少し調べてみると、Haskellを使った圏論の入門といったことを紹介してくれているサイトを見つけて、このサイトを参考にしながら、勉強を始めた。本業研究の傍らでどこまですすめるかな。

揖斐川、長良川、木曽川取水量

揖斐川:席田用水:18m3/s
長良川:曽代用水(世界灌漑遺産):約9m3/s
木曽川:犬山頭首工左岸:44.5m3/s(宮田・扶桑・江南で28m3/s、木津で17m3/s)
犬山頭首工右岸: 6.5m3/s

デザイン(2)

 建築士になりたい、という小学生の頃からの夢は、実はずっと自分の中に生きているのかもしれないと最近思う。人生に残された時間も少ないので、このことにだんだんと自分の研究活動も収斂させていきたい。
 農業用の水利施設や土木施設に欠けているのは、遊びや無駄だろう。それは当然のことであり、効率的に水をため効率的に水を配り、効率的に水を排水しないと、生産性が上がらない。できる限り水の損失を少なくし、広範囲に必要な水量を必要なタイミングで配水することが、近代的な土木施設設計の根底に横たわる思想である。このような思想で作られた施設にあとからいくら小手先の変更を付け加えたとしても、本質的な変化は見込めない。自然を模倣し、自然を呼び込むような設計をすることがこれから必要なことである。

やったこと(9.1-10.16)

・9月7日~9日:夏季フィールド実習。履修者6名(女:4名、男:2名)。少し欲張りすぎたか。全体のオーガナイズが課題。途中休憩も適宜挟むことも必要。

・9月13日:木津用水調査。千家、大西、津川。前日からの降雨で、天気が心配だったが、晴れた。木津用水事務所に地図を返却後、水位計設置場所の確認およびデータ回収。

・9月14日:半年に一回の定期健診。CTの画像には問題なし。右肺上部の空洞の大きさにもほぼ変化はなし。気管にわずかな違和感があり、一日に一回ほどわずかに痰がでることは少し気がかり。かかりつけのお医者さんにも、原因はわからず。午後より、ディアナの中間発表。データが少なくなかなかうまくまとまらないが、なんとか博士を取らなくてはならない。

・9月16日:月一回の演習林調査。三嶋くん。魚眼レンズによる開空度の撮影を試みる。

・ゲノムセンター利用申請。
・福島川俣町の河川への機器設置申請書作成。→保高さんに提出お願い。

・9月20日~10月2日:ロシアアムール川調査およぼIWEP主催の国際シンポジウム。
ブレア川上流で河川沿いに、多点で河川水のサンプリング。上流域の状態を確認することができた。シンポジウムでは、永久凍土が溶存鉄の生成量の及ぼす影響があることを示す仮説を論証することを行った。つめなければならない点も多いが、少し研究が進んだように思う。

・ロシア滞在中に新4年生(現在3年生)の配属が決まる。今年は、2名の配属となった。上限が3名なので、まずますの出来。

・10月3日:国費優先配置の留学生が来日。これから、5年間の付き合いとなる。

・10月4日:ベトナムからのお客さんとカーンくんとの面談。PPTで研究説明。相変わらずほとんど進んでいないのだが、会談はなごやかに進んで、大禍なく終了。

・10月4日: 科研費申請書類。挑戦的萌芽研究「安価なWi-Fi積雪深計構築と多点観測が開く計測の新たな可能性の検討」の作成完了。ロシア滞在中から少しづつ書いてきたので、なんとか完成。しかし、基盤Cと挑戦的萌芽は同時には出せないことを知る!愕然。科研Cで、溶存鉄のカラム実験を行うほうを優先させて、挑戦的萌芽は、来年度以降にとっておくことにする。最後まで原稿として仕上げたことは、これから先に生きてくるだろう、と思うことにする。

・10月6日:測量学Ⅰの講義。ガイダンスのため、早めの終了。実習は行わず。

・10月7日:NEDOで研究報告会。 大阪の南摂津は意外と遠い。新幹線で新大阪、御堂筋線で千里中央、そして、大阪モノレールで南摂津駅下車、徒歩10分程度。トータル2時間半ぐらい。往路、千里中央のマクドで昼食、南摂津駅でチケットがないことに気がつき、お情けで、そのまま出してもらう。報告会は、無事終了。なんとかしのいだ感じ。

・10月9日~10日:福島県川俣町河川の機器設置調査。ADCP、水圧センサー設置、流量観測を行う。ADCPは、SONTEKのIQ PlusをSONTEKより2ヶ月のレンタルにて調達。グラウチングに固定をして、河床に沈める。 0.5m3/s。ケーブルの保護ケーブル、大気圧補正用のセンサーを忘れた。1週間後に再度来ることにする。

・10月12日:SNHOの大ゼミ。中間報告。研究室メンバーは、一人以外無事発表終了。進捗にはかなり差がある。M1は2名ともよく頑張っていると思う。

・10月13日:ENVI(リモセンソフト)の京都大学のサービスへリモートアクセスする設定を行う。Puttyによる鍵認証等のネットワーク接続設定は完了したが、ENVI自体の正常インストールができず、京大のメディアセンターに問い合わせ。

・10月14日:農業水利施設見学。短期インドネシア留学生2名および研究室のインドネシア留学生1名。10時~12時:曽代用水。事務所で説明後、長良川の取水口、余水吐き、分水工を見学。犬山に移動。犬山頭首工近く、でんがくのお店で、昼食。13時半~16時:犬山頭首工見学。事務所説明後、屋上で一望し、実際に頭首工の管理道路を横断して、施設見学。犬山城見学後、18時に帰学。

10月15日:福島県川俣町河川の機器設置調査(2回目)。保護ケーブルを巻く。大気圧補正用の水圧センサーを堰脇の樋門に設置。流量観測。0.31m3/s。

2016年9月14日水曜日

SWAT気象データ準備

木場潟のSWATモデルの入力データの整備:気象データ
期間:1995/1/1 - 2015/12/31
データ種・観測地点:降水(小松)、最高・最低気温(小松)、湿度(金沢)、風速(小松)、日射(輪島)

2016年9月11日日曜日

ロープワーク

川の調査では、流れの中に入って、流速を測定します。橋の上から採水バケツを投げ込んで採水をしたりします。川の底に観測計器を固定して長期の観測をしたりもします。あるいは、川岸に観測用の自動採水器を固定して、定期的に採水をしたりします。さらには、土壌中に観測用の機器を埋め込んだりもします。はたまた、キャンプをしながら現場を回って調査をすることもあります。そういったとき、ロープワークは何かと役に立ちます。結ぶ、固定する、命綱にする、など用途は多様ですが、とにかくロープ一本あれば、大抵のことはできます。基本的な結び方として、以下のような結び方があります。これらは、いつでもどこでも、使えるように普段からトレーニングしておくとよいですね。私の手元にも、一本ロープがあります。

1.もやい結びあるいは強化もやい結び:結び方の王様、杭、ペグ、木などにロープを固定する
2.巻き結び:やはり固定するときに使える。徳利結びとも呼ばれ、筒状のものを固定して吊るす。
  土嚢の袋を縛るのにも便利。
3.ふた結び:これも固定するときに使用。結びやすくほどけにくい。
4.本結び:複数のロープをつなぎ合わせたり、ものを縛るときに使う。風呂敷のしめ方でもある。 
  縦結びにならないように気をつける。
5.フィッシャーマン結び:複数のロープを対称な結びめでつなぐ。太さの異なるロープもつなげる。

2016年9月10日土曜日

夏季フィールド実習(3)

9月9日(金):夏季フィールド実習3日目
天候:晴れ
教員、TA2名

9:00 集合
9:00 - 9:45  電気泳動のためのゲル作成
9:45 - 10:15 イオンクロマトグラフの検量線作成データの入力
10:15 - 10:30 電気泳動結果の観察(予備実験分)
10:30 - 10:50 QGISのインストール
10:50 - 11:30 電気泳動槽へのサンプルとバッファーの注入、電気泳動
11:30 - 12:00 GISの基礎講義
12:00 - 12:20 電気泳動結果の観察

12:20 - 13:30 昼休み

13:30 - 16:00 GISの演習と水質データの整理考察
QGISを使用して、データの読み込み、ラスターデータ、ベクターデータの基本的な使い方練習
水質データと集水域と土地利用との関係などに関して考察
最後に感想を述べてもらって無事に実習終了。

かなりの内容を詰め込んだために、休憩もろくにとらずに続けて実習を実施した。その点の改良が必要との要望があった。全体としては、いろいろなことができてよかった、という感想が多かったので、まあ初回としては及第点だろうか。


2016年9月8日木曜日

夏季フィールド実習(2)

9月8日(木):夏季フィールド実習2日目
天候:雨のち晴れ
学生6名、教員1名、TA3名

9:00集合
エントランス前で、レベル測量の基本練習(レベル据え付け、標尺の読み、据替の意味など)

10:00 雨がやまないので、実験に切り替え、104号室へ移動
eDNA用のDNA抽出作業の練習。 ピペット操作の基本、分注、遠心分離などの基本操作を行う。

10:45 - 11:15 eDNA抽出作業の待ち時間を利用して、115実験室へ移動。
イオンクロマトグラフの基本原理の説明と、校正液(1倍希釈、5倍希釈、10倍希釈溶液の作成)。

11:15 - 12:30 104号室へ戻って、DNA抽出作業の続きを実施。

12:40 - 13:40 昼食休憩。イオンクロマトのウォームアップを開始するが、途中、停電のため停止。岐阜、愛知の広域での停電により、25分間程度電気供給が途絶える。火力発電所の周波数低下が原因とのこと。復旧後、イオンクロマトのウォームアップ再度開始。

13:40 イオンクロマトのオートサンプラーに、試料水をセット。
13:45 - 15:15 エントランス前の水路に移動。
ADCP(SonTEK IQ plus)を用いて水路の流量観測法の実演。河川断面のレベル測量、河川断面データのデータ入力、電磁流速計を用いた流速測定を実習する。取得データの説明を行って、デモンストレーションを行う。流速0.09m程度、流量0.09m3/s。ほとんど動いていない水だが、それなりに結果が出せる点が面白い。

15:15 - 16:00 104号室で、抽出DNA溶液をPCR用に作成したMixtureに分注する作業を実習。1μmの微量な溶液を、PCRチューブの蓋裏面に分注していく裏ワザ実習。分注後、遠心、振とうを2回繰り返してPCRへ。115号室に移動して、イオンクロマトグラフの途中経過を見ながら、結果がでる出方を説明し、2日目の実習終了。先日遅かったので、少し早めに終了。

夏季フィールド実習(1)

9月7日(水):夏季フィールド実習1日目、河川水の採水および流量観測
天気:曇りのち晴れ。蒸し暑い。

8:00集合、学生6名、教員1名、TA1名

8:15出発
東海北陸道(関IC-白鳥IC)で、長良川上流域へ

9:30採水ポイント1に到着、イオンクロマト用15ml濾過採水、eDNA用1L直接採水の方法を説明、採水を実演。流量観測も試みるが、流れが速く、川岸の1点における水深と流速の測定、および川幅の測定(レーザー測距儀)のみを行う。 

東海北陸道(白鳥IC-郡上八幡IC)で、郡上八幡へ

10:20採水ポイント2に到着、採水を行う。
市街地へ移動し、市街地内のパーキングに駐車。
宗祇水(ポイント3)、長良川の支流河川(ポイント4)、街中の水路(ポイント5)、より採水。

12:30 - 13:30 昼食休憩。市内の食堂で全員で食事。牛丼定食、とろろ丼定食、食後に全員でスムージーを食す。

東海北陸道(郡上八幡IC-関IC)で、市内金華橋をわたって、川原町経由で、堤防沿いに忠節橋へ。
15:00 忠節橋下で採水。
堤防道路で、長良川河口堰へ。

16:10 長良川河口堰の上から、バケツを使用して採水。バケツの使用を練習。
高速道路を使用して、大学へ。

18:00過ぎ帰学。
eDNA用の濾過および冷凍保存の方法を実演・実習。
19:30終了。

 

2016年9月6日火曜日

memo(2)

宮台真司さんのYouTube記録。「資本主義で勝ち抜いている人は、中国人、ユダヤ人、である。これらの人たちには、帰れる場所がある人たち。どちらも親戚・血縁を非常に大事にする。いつでも帰ることができるセーフ・ベースがあることで、激烈な資本主義の戦いも戦うこともできる。こういう人たちは、一生資本主義の中で戦うことはなく、資本主義の舞台から降りる時期がある。たとえば、50代から早期に退職してなど。日本の社会として、サステナブルな社会にするには、降りて帰ってくる場所をつくるということが大事か」。

2016年9月5日月曜日

memo

どうしたらたゆまぬ研究活動を続けられるだろうか。つかれたときにも、モチベーションを失わずに。この数日疲れている。多くのやるべきことが滞っている。研究のエッセンシャルな核もすぐに見失いがち。日々のこなさなければならないことに流されているうちに、大事なことも見失ってしまいがち。どうしたら、すべての研究に目が行き届くだろうか。一日一回でもすべての研究を真剣に考える時間が少しでもあるといいのだろうか。

システム論(3)

地球システムや、地球上で発生している事象を対象とする場合、時間発展するシステムとしてとらえることができるが、そのシステムは、やり直しの効かない一回性を持っているという点が重要である。古典的な科学的方法論では、再現可能性が科学的プロトコルの最重要な条件となるが、地球上で現実に発生している事象を対象にする限り、やり直しがきかないために、再現可能性ということは条件として設定できない。さらに厳密にいえば、実験室内で行われる実験であっても、地球上で発生している事象に違いはなく、等しく時間進行は後戻りが効かない、という意味では、厳密な意味での再現というのはいかなる局面でも成立しない。つまり、再現可能という条件を課すことができるという考え方自体が、幻想にしか過ぎないということになる。環境科学に取り組む者は、もっとこのことを意識してもよいのではないかと思う。古典的な科学の枠組みでは環境問題をとらえきることはできないということを意識化するためにも。

モデリング(2)

 人間は、記号(シンボル)を通して世界を見ている。そして、シンボルは同じと違うを効率的に区分してくれる。モデル化とは、世界に起こる現象を記述する方法であり、そのために数式というシンボルを用いる。数式もシンボルの一種である以上、人間の世界認識のあり方と本質的にかわらない。システム論とモデリングとは、不可分の関係にある。わたしたちが何かしらの世界認識をするとき、世界定め、つまり境界を定める。境界の中は、何らかの意味で同一の空間であり、境界の外は、内側とは異なる空間として区別される。境界に囲まれた中の領域を対象として、関心を抱いている現象に関しての記述を行う。私たちの専門分野である水文学では、流域をひとつの単位として考えることが多いが、地球全体を対象として、つまり、地球と宇宙空間との境界を境界として、水の循環を記述する研究もある。境界には境界条件をあたえ、システムの中には初期条件を与えるのが通例である。

2016年9月4日日曜日

システム論(2)

 地球科学、とくに、環境問題を研究するものにとって、システム論的考え方は欠かせない。しかし、ここに一つ厄介な問題が内在している。古典的な科学的、客観的認識や方法論の大前提になっているのが、関心の対象と、自分自身の存在や認識とは切り離して考えることができる(対象に自分自身の存在や認識が影響を及ぼさない)という前提である。このような前提を受け入れたうえで対象の挙動を観測することを外部観測という。一方、このような前提を置いたときに明らかな弊害が生じるときは、従来の方法論が適用できないことを明示的に示すために、外部観測に対置させて、内部観測という。
 いくつか具体的問題を考えてみよう。斜面を転がり落ちるボールの運動と、それを観測する自分の存在や認識とは、完全に切り離して考えることができると仮定しても問題ないであろう。しかし、これも厳密には近似的にそうみなせるということであろう。つまり、万有引力の法則によれば、あらゆる質量をもつ物体間には相互に力が作用する。つまり、自分の存在とボールとは相互に引力を介して作用しあっている。しかし、地球の重力の作用や斜面を構成する物質との間に働く摩擦力がはるかに大きいために、自分の存在がボールに及ぼす影響は無視しうるのであろう。
 よく例として挙げられるのが、量子力学的現象における観測者と対象の不可分性である。ミクロの粒子の動態(速度と位置)は、観測することによりどちらかが決定される一方、他方は不確定となる。つまり、観測することにより部分的に状態が確定し、部分的には確定できず、観測という行為によってはじめて状態が確定する。これは観測という行為が粒子の状態に影響を及ぼしているとみなすこともでき、自分自身の存在が対象に影響を及ぼしているとみなしうるような問題とされる。
 また、もっとわかりやすい事例では、文化人類学や社会科学におけるある社会集団の観察行為である。特に、対象としている社会集団の一員としてその集団を観察する参与観察においては、観察している当人が観察の対象としている社会集団の一員となっているために、当人の存在自体が、その社会集団の特性を変容させることになる。あくまでも短期間の滞在であって、近似的には影響を及ぼしていないとみなすのが通常なのであろうが、どんなに短期であろうとも、ひとつ難しい問題が含まれている。それは、観察する当人が、観察対象の人間に対して聞き取りやアンケートを行ったとき、対象の人間の会話やアンケートへの応答は、いったいどういうことを意味するのか、という点である。人間のコミュニケーションは必ず相手あってこそのものであり、相手の存在あっての自分の応答であるため、こちらの存在がその人の応答に必ず影響を及ぼしているに違いない。
 このように考えてくると、外部観測的問題と内部観測的問題とは、自分の存在が対象の及ぼす影響はどのような場合にも多かれ少なかれ存在し、それは程度の問題である、ということではないだろうか。

システム論(1)

水文学も地球システムのうちの一要素として位置づける必要がある。システム論は、現在、いろいろな分野で注目を集めている。システムは、複数の相互作用する要素から構成され、要素どうしの相互作用により要素ひとつひとつだけを単独で見たときには見られない特性が生み出されるのが、システムの特徴だとされる。システムバイオロジー、進化システムバイオロジーなど注目すべき分野が台頭している。地球システムを考えるときには、気圏、地圏、水圏、生物圏、人間圏という要素を考え、それらの相互作用から生み出される特性というようにとらえることが多いが、生物圏を構成する生物種に着目したときに、生物の進化をシステム論的にとらえていくのがシステムバイオロジーである。システムの要素はまたシステムを構成し、そのシステムの要素はさらにシステムを構成し、というように、システムは、要素とシステムを介して、入れ子状になっていると捉えることができる。